Fishmanのトラウトロッドと「僕」の進化論

こんにちは。北海道FishmanAUXの霜上です。

今回は、私がFishmanと出会うきっかけとなったロッドと、そのロッドでのメモリアルフィッシュをご紹介します。

そのロッドは……Fishman「Beams 5.0ft UL」。

ハンドメイド時代を経て、代表のケンさん(赤塚ケンイチ)が量産メーカーへと歩み出した際のグラス製トラウトロッド。旧Beams 7.0Lシリーズ、旧Beams 7.10MHなどと共にラインナップされていました。

YouTubeでの低弾道&ピンスポ撃ちで全国に驚きと衝撃が走ったこのロッド。初回分は即完売。追加受注分も即完売と、北海道から全国へ、渓流ベイトというスタイルが雪崩のように広がっていったのです(あえてここは渓流ベイトフィネスではなく、当時記載されていた「渓流ベイト」と書かせていただきます)。

「量産される!」と聞いた時、ユーザーだった私はなんの迷いもなく購入しました。

目の前で魔法のような低弾道でピンスポットに向かって飛んでいくルアー、そして目の前で繰り出されるスーパーキャストに一目惚れでした。

旧Beams 5.0ft ULと出会い、私はたくさんのメモリアルフィッシュを手にしてきました。その中の思い出深い2尾をご紹介します。

●恐れない心がランカーを引き寄せるのだ

僕の暮らす北海道・道南地方においてブラウントラウトの魚影は濃厚で、初心者でも簡単にチビブラウンが釣れるほど。しかし、メジャーな魚ゆえ常にプレッシャーが高く、50㎝以上の大型クラスは難易度が非常に高いのが現実です。僕の釣行エリアのアベレージは30㎝クラス、サイズは伸びても40㎝でした。

「絶対に50㎝アップはいる!」

そう言われ続け、フィールドに通い続けること2年。しかし、当時、渓流ベイト初心者だった私が何度も通おうともなかなか出ない。本当に釣れないサイズでした。釣っている人たちと私はなにが違うのだろう……自問自答しながら毎週川に通い続けました。

僕がグッドサイズを手にしたのは、中級レベルの難易度をもつ河川でした。ついに目当ての魚を手にした時のポイント状況は、今も忘れることがありません。

川幅は5〜6mほどで、水深は最深部で150cm。岩盤層メインで川幅10mほどの上流から小さな落ち込みを数段経てから、倒木が流れを変化させ、深い落ち込みを形成しています。そこに倒木の枝葉が刺さっており、流心と対流が複雑に絡んでいるポイント。

スプーンをクロスキャストし、倒木の幹がつくり出す川底に吸い込まれるような流れにルアーを乗せ、徐々にドリフトさせるイメージで攻めました。流れの安定したボトムに定位するブラウンを想像しながら、スプーンを目の前に落とし込む。そこで、ついにヒット!

ようやく手にした魚は少し痩せていましたが、紛れもなく50㎝アップのブラウントラウト!

ブラウントラウト

この魚をキャッチすることで、今まで自分がキャストしてきたポイントの見方、誘い、コース、食わせ……などなど、攻めているようで、全く攻めていなかった。また、大型狙いの釣りをイメージできているようで、実はできていなかったのだと気づかされました。

「恐れない」ハートの強さが、ランカーを引き寄せるのでした。

まずはキャスティング。誰もが躊躇する、流れが強く川面に突き刺さる倒木の根元、そのさらに根元に沿うようにドンピシャで着水させる必要があること。少しでも躊躇して根掛かりの少ない安全ゾーンばかり狙っていては、ランカーは手にできないこと。

ルアーの誘導もしかりです。水中に漂っている枝を恐れることなく舐めるようにトレースし、食わせるポイントまでしっかりと落とす、レンジを意識する。ここに着いているだろうという仮説を立て、自信を持って「ここだ!」というところで食わせのアクションを入れる。

キャストが楽しい、ピンポイントを狙うことが楽しいと思わせてくれ、キャスト精度が一気に向上したきっかけが、このブラウントラウトであり旧Beams 5.0ft ULでした。

●同じ種族。でも、ブラウンとは異なるレインボーのファイト

大型化する北海道のニジマスは、道内のみならず、道外のアングラーにも憧れの存在であり、特に十勝・道東地方では70㎝クラスを手にすることも夢ではありません。

ブラウントラウト

しかし、こと道南に関しては勝手が違います。レインボーは名前こそ知られていますが、河川規模が小さすぎること、また魚影が薄いため、好んで入る人はほぼいないのが現状。ブラウンに比べるとかなり数が少なく、貴重な魚ながら、アベレージサイズは20~30㎝ほどと小型なのです。

僕が訪れたのは、川幅は5m、最深部でも100cmあるかないかという小河川でした。上流が広く、ボサと倒木により急激に川幅が狭くなり、流れの緩いボサ下と倒木の下、流れのキツい流心がハッキリと分かれていているポイントでのこと。

「ここだ!」というボサ下に、ブレることなくアップクロスでルアーを入れ、2〜3回トゥイッチ。そして、流心にスプーンを送り込んだ瞬間、猛烈なスタートダッシュと同時に縦横無尽に駆け回り、跳ねる魚体に見えた頬のレッドバンド。

レインボートラウト

ブラウントラウトとはまったく違うファイト。「これでもか!」とバットから弧を描くロッド。キャッチした時には、全身が震えるほどの興奮と喜びを感じたことを今でも思い出します。この魚で、僕は完全にFishmanのトリコになりました。

たくさんのメモリアルフィッシュを連れてきてくれたBeams 5.0ft UL。このロッドに出会い、釣りの楽しさを教えてもらい、そして今こうしてFishmanのAUXとして微力ながら携われていることが不思議というか、夢のようです。

●進化し続けるFishmanのトラウトロッド群

この2尾を手にして以来、僕の考えは変わりました。

感度が高くアクションを付けやすいオートマ車のような一般的なトラウトロッドではなく、キャスト自体(テイクバック、溜め、リリース、フォロースルー)を自身で自在にコントロールする、マニュアル車のような感覚自体が楽しいのだと強く感じたのです。と同時に「釣れればいいや」ではなく「こうして釣りたい」を形にすること。結果よりもプロセスを楽しむようになりました。

その魚との出会いを、一魚種一本の専用機ではなく、どんな魚種にもアングラー次第で無限にアプローチできるものを求めるようになりました。私の求めていた高い汎用性を持っていたのがFishmanブランドでした。

現在、旧Beams 5.0ft ULは「Beams blancsierra 5.2 UL」としてさらにブラッシュアップされ、全国のトラウトアングラーの相棒として大活躍中です。テレスコピックのBeams Xpan4.3LTS、さらなるショートロッドでウッドグリップという上質なコスメを装備、テクニカルキャストも得意としたBeams blancsierra 3.9UL LIMITEDと、派生した番手も大人気です。

新しい5.2ULも4.3LTSも3.9ULも、キャストフィールは北海道の土地でテストを重ね、ロッドデザイナーのケンさんが長年培ってきたギミックを惜しげもなく注ぎ込んだものばかり。トラウトの聖地・北海道が育て上げた素敵なロッドたちですので、店頭に並んでいた際にはぜひ手に取ってみて下さい。

緊急事態宣言が先日、39県で解除され、継続されたのは一部都道府県となりました。日本の新型コロナウイルス対策は新たなステージへ進みましたが、今なお見えないウイルスとの闘いは続いています。あいにく、北海道は一部地域の休業要請解除までは進んではいますが、第二波を経験した唯一の土地として、改めて気を引き締めて過ごしていかなければならない時であることを毎日知事から発信されている状況です。

「さぁ、今日は釣りに行くぞ!」と心から喜び、フィールドに足を運べるその日まで、一緒に頑張っていきましょう!

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■タックル
ロッド:ビームス5.0ft UL(フィッシュマン ※旧モデル)
リール:REVO LTZ(アブガルシア)
ライン:PE1.2号(YGKよつあみ)
リーダー:フロロリーダー8Lb(サンヨーナイロン)
ルアー:バックス各種(アングラーズシステム)
■フィールド/北海道